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時評

矢板明夫 : 台湾の蔡英文氏、平和と民主主義訴え 中米など外遊で


台湾の蔡英文総統は米国を経由した中米への今回の約10日間の外遊で、「平和」と「民主主義」を繰り返し訴えた。台湾を威圧する中国に対抗し台湾支持を訴えた蔡氏は5日、米西部ロサンゼルス近郊でマッカーシー米下院議長と会談し、「私たちが築き上げた平和と民主主義が、かつてないほどの困難に直面している。米国がともに立ち向かうことに感謝する」と語った。

蔡氏は3月29日に台北の空港を出発した際に「台湾は孤独ではない。自由と平和のために出発する」との談話を発表した。米東部ニューヨーク州で米シンクタンクのイベントで講演した際も「台湾は民主主義の力を信じ、自分たちのライフスタイルを守りぬく強い意志がある」と強調した。

中国は近年、台湾への軍事的圧力を強化している。台湾の親中メディアなどでは、中国側の主張に沿った形で「米国は絶対に台湾を助けない」という「疑米論」(米国を疑う論)が頭をもたげている。

放置すれば来年1月に予定される次期総統選挙にも影響が出かねないため、蔡氏は今回の訪米で米国との強固な連帯を内外にアピールし、「疑米論」を払拭したい思惑があった。

この日の蔡氏とマッカーシー氏との会談には、多数の民主、共和両党の米連邦議員が同席した。これに関連して台湾与党、民主進歩党の何志偉立法委員(国会議員に相当)は、「昨年訪台したペロシ米下院議長=当時=は民主党で、今回、蔡氏と会談したマッカーシー氏は共和党だ。内政の対立を越え、超党派議員が価値観を共有する台湾を支持してくれていることは何よりもうれしい」と語った。

台湾の大手シンクタンク「遠景基金会」の米国専門家、頼怡忠氏は会談の意義について、「外交と安全保障の両面で台湾にとってプラスだ」と指摘した。昨年のペロシ氏の訪台と今回の蔡氏訪米で、米台間の要人会談を〝常態化〟させたことは大きな意味を持つといえる。

マッカーシー氏は、武器をタイムリーに台湾に届くようにしなければならないと述べ、武器売却を継続する重要性を指摘した。頼氏は「最近、米国がウクライナに対する武器支援を増やしており、台湾への武器提供が遅れるのではないかと懸念する声があった。マッカーシー氏の言葉は心強く、台湾はより安全になった」と述べた。

原文出處 產經新聞