香港で10日投票が行われた地方議会にあたる区議会の議員選挙は、開票の結果、中国政府寄りの親中派が議席をほぼ独占しました。選挙制度の変更によって民主派は1人も立候補できず、有権者の関心は低く、投票率は27.5%と、香港が中国に返還されて以来、最も低くなりました。10日投票が行われた香港の区議会議員選挙は、11日朝までに開票作業が終了しました。4年に1度行われる香港の区議会議員選挙は、かつては香港で最も民意を反映しやすい選挙とされていましたが、ことし7月の選挙制度の変更によって、立候補するには香港政府が任命する委員会のメンバーの推薦が必要とされるなど、親中派に有利な仕組みとなりました。
このため、中国政府に批判的な民主派は1人も立候補できず、開票の結果、直接投票で決まる88の議席を親中派がほぼ独占することになりました。
一方、選挙に対する有権者の関心は極めて低く、投票率は27.5%と、過去最高の71.2%を記録した前回を大きく下回り、1997年に香港が中国に返還されて以来行われた区議会議員選挙の中で最も低くなりました。
これまで民主派を支持してきた有権者の多くが、棄権したためとみられます。
香港の区議会は、直接投票以外の議席は政府が委任する枠などで、470の全議席は、親中派によってほぼ独占されることになります。
中国外務省「選挙の過程は秩序があり公平公正」
香港の区議会議員選挙をめぐり中国外務省の毛寧報道官は、11日の記者会見で投票率が香港の中国返還以来、最も低くなったことについて問われましたが、質問には直接答えず「選挙の過程は秩序があり、公平公正で『愛国者による統治』の原則のもとで善良な政治の新たな気風があらわれている」と主張しました。
また、国営の中国中央テレビも現地時間の11日午前中のニュースでは、投票率には触れず投票所の映像などとともに「選挙は成功裏に行われた」などと短く伝えました。
専門家“立候補の段階で民主派排除 市民の関心低く”
香港の政治に詳しい立教大学の倉田徹教授は、NHKのインタビューで「今回の選挙は、立候補の段階で民主派の候補者が全員排除されており、最初から『誰が当選するか』は焦点ではなく、市民の関心は低かった。香港政府が大規模な宣伝を通じて市民に投票を呼びかけたのにもかかわらず、これほどの低い投票率に終わったということは、民主派を排除するという選挙のやり方を香港市民の多くが受け入れていない表れではないか」と指摘しました。
そして「これだけ投票率が低かったということは、本当は民主派に投票したかった人のほうがずっと多かったということで、香港では今でも民主派の支持者が多数派だと思う」と分析しました。
そのうえで「今回の選挙は北京の共産党政権にとっては『愛国者による香港の統治』の完成を意味し、香港の政治は安定に向かっていると宣伝を続けるだろう。しかし、実際には市民の心を勝ち得ていないということは選挙結果から明らかだ。今後、中国政府や香港政府は、どうやって市民の要求をくみ取って政治を行うのか、政治不信や政治に対する不満をどう解消していくのか、ますます技量が試されるし、難しい課題になる」と指摘しています。
原文出處 NHK