ロシア外務省は17日、ウクライナ情勢をめぐるロシアの要求に対する米国と北大西洋条約機構(NATO)の書面回答に文書で返答したと発表した。
NATOの拡大停止などロシア側の一連の要求が無視され、「米国や同盟国に『都合のいい』論点が選ばれた」とNATO側の回答を厳しく批判。今後の交渉で合意できなければ、「軍事技術的な手段」で対応すると警告した。
ロシアは昨年12月、欧米側にNATOの拡大停止などを要求した。今回の文書では、拡大停止のほか、NATOの兵力や装備を東欧への拡大が始まった97年時点の国に戻すことなどの基本的な要求に米国が「建設的な回答をしなかった」と不満を示した。
米国とNATOの軍事活動がロシア国境近くで活発化していると懸念を示し、米国がロシアの安全に確固とした法的な保証をする用意がなければ、軍事技術的な手段を取る必要があるとした。
緊迫の度を強めるウクライナ情勢については、「ロシアによる侵攻計画はない」と主張し、ロシアに責任を問うのは、ロシアの提案に圧力をかけるものだと不快感を示した。
ウクライナ国境付近に集結する大規模な兵力についても、「ロシア軍の自国内での展開は、米国の国益に影響しない」と反発した。
ロシアが2014年に併合したウクライナ南部クリミア半島の領有権の問題は「決着した」と主張。ウクライナがNATOに加盟して奪還を目指せば、欧米がロシアとの武力衝突に巻き込まれる恐れがあると警告した。
中距離ミサイルなどの問題では協力に前向きな姿勢も見せたが、全体的には双方の溝の大きさを浮き彫りにする内容となった。
一方、バイデン米大統領は17日、記者団にロシアがウクライナに侵攻する可能性を問われ「非常に高い。彼らは部隊を撤退させておらず、むしろ増強した」と答えた。
ロシアが攻撃を受けたとの事実をでっち上げる偽旗作戦に出る可能性を指摘し、「すべての兆候は、彼らがウクライナに侵攻し、攻撃する準備ができていると示している」と述べた。
バイデン氏はロシアとの外交対話がまだ可能かどうかを問われると「イエス」と述べた。ただ、プーチン大統領と直接協議することについては「電話をする予定はない」と語った。
原文出處 朝日新聞