半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が来年、熊本県に工場を新設、2024年の稼働を目指すなど、産業、科学技術分野での日台協力の深化が注目される中、9月に設立された日本研究のシンクタンク「台湾日本研究院」が日台交流の新たな担い手として期待されている。同研究院の理事長で台湾の政治大学教授、李世暉氏は「日台産業連携の懸け橋になりたい」と抱負を語った。
同研究院設立の背景について、李氏は「米中貿易摩擦に伴い、サプライチェーン(供給網)を再構築する動きが世界中に広がっている。価値観が近い日本と台湾の間で、ハイテク分野での連携強化が求められている」と説明する。
李氏によれば、これまでの日台経済交流は、互いに持っている商品を売ったり買ったりする貿易が中心だったが、これからはそれぞれが所有する技術を持ち寄り「一緒に新しいものを作り出すことが可能になった」と強調する。台湾と日本の得意分野が異なるため、「協力すれば、半導体、人工知能(AI)などさまざまな新商品を開発して地域産業の一体化を促進し、世界経済にも貢献できる」と語った。TSMCの日本進出はその試金石になるという。
研究院のメンバーは、台湾の各大学で教壇に立つ若手日本研究者が中心だが、経済部(経済産業省に相当)などの当局各部門やTSMCなどのハイテク企業とも緊密に連携。日本の独立行政法人、経済産業研究所とも提携を進めている。
李氏は「李登輝元総統ら日本語世代が台湾の政治経済の主役だった時代は、日本と交流するチャンネルはたくさんあったが、最近は減少している。私たちはそれを補いつつ、新しい形の日台関係づくりに協力していきたい」と語った。
原文出處 產經新聞